漢字の神様は毎日毎日、たくさんの漢字をつくっていました。
空、光、土、風・・・・・
犬、猫、鳥、馬・・・・・
世の中のありとあらゆる名前の漢字を考えたあとは
歩く、走る、働く、食べる・・・・・
ありとあらゆる動作の漢字を作り始めました。
さて、ある日のこと
漢字の神様は「わらう」という動作の漢字を一生懸命考えていました。
でも、なかなか「わらう」というイメージにぴったりの漢字が思い浮かびません。
そのうちに、一匹の犬が神様のそばにやってきました。
「神様、お仕事ばっかりしてないで、いっしょにあそんでよ」
「ああだめだめ、今大事なことを考えているんだ、お庭に出ておいで」
「つまんないなあ」
でも犬は庭でいいものを見つけました。大きな竹かごです。
くわえてぽん!っとほうりなげると、竹かごはぴょんぴょんはずんで転がります。
それを追いかけてはまた ぽん!
犬はそうやって、いつまでも楽しく遊んでいました。
ところが、犬が竹かごを真上に放り投げたとき、かごがすっぽり犬の頭にかぶさってしまったのです。
頭をどんなに強く振ってみても、かごは全然とれません。
「ああ困った!どうしよう・・・ずっとこのままなのかなあ」
竹かごをかぶったまま、しょんぼりたたずんでいる犬・・・・
神様はそんな犬の姿を見て、思わず吹き出してしまいました。
「そうだ、これを漢字にしてみよう」
そうしてできたのが、竹かんむりに犬の字をもじった
「笑う」という漢字だったといわれています。
浅草の民芸品に「ざるかぶり犬」という縁起物があるそうです。笑いは福を呼ぶ、ということでしょうか。
センちゃんはザルをかぶっていませんが、われわれにたくさん笑いと福を授けてくれました。
一説によれば、上のお話は日本の上方演芸から生まれたとのことです。
だとすれば、犬は本当に昔から日本人の生活に深くかかわっていたのですね。